10代で子供を産む女を軽蔑していた私の脳天がぶち破られた「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」を読んで

最近読んだ本が考えさせられる物ばかりだったので、紹介したいです。ヤクザや性産業などのアンダーグラウンドなルポタージュ本が好きなんですが、これは読んでいる時も心がズドーンとなった。

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち

私は常日頃から、若くして子供を作り勝手に貧困であえぐ人のことを軽蔑していた。

「バカだな〜。自分一人なら食い扶持を稼ぐ事なんて簡単なのに、なぜ子供が子供を産んで、ハードモードな道を選ぶのか」。

もしや、発達障害とか知的グレーなんじゃないか……。

なんて、軽蔑してました。

でも、この本を読んで自分はなんて想像力のないバカなんだ……。と思いました。

この本は、沖縄出身の教授が実際に取材をしたルポタージュ。取材対象は、10代〜20代の若い女性たち。

  • 男からのDV
  • 避妊をしない性交、若年出産
  • ネグレクト

キャバクラで働いて子供を育てたり、レイプされたり、売春させられ金を搾取させられたり。

字面にすると「早く、逃げれば?」と思うのだがそんな単純な話ではない。

沖縄は離婚率も出生率も全国平均より高い。

沖縄が貧しいのは教育水準が低いから。とも言われるけれど、まず先に必要なのは3食バランスのいい食事がとれて、快適なベッドで8時間の睡眠を得ることができて、(身体的精神的)な暴力を振るわれない日常が必要だってことに気づく。教育というのはその次なんだよね。安全な日常が必要ということ。

この本に出てくる少女たちの親は子供を守るということが欠如している。

悪い男に引っかかる女が悪い! と私も以前までは思ってました。でも、この少女たちはどんなクズ男でも初めは少しの優しさに心の拠り所を求めたり、一緒にいることで肯定感で満たされたりしたんだろうなぁと。

一人でいるよりはマシ。と思ったんだろうなと。

大人になるにつれ経験値が上がって孤独に耐えられる事もあるけど、少女のうちじゃまだ寂しいのだろうと想像する。

寂しさは厄介。

判断を鈍らせる。

だから、売春させられてもこの人のためなら、と判断が鈍る。

私が中学生の頃の地元の話になるけど。

田舎の小中というのは、自宅から通える校区内の学校に行くので、貧乏もヤンキーも金持ちもみんな一緒に学ぶ。子供は腕力や暴力で支配するので、大人しい子は目をつけられやすいし、私は目立って生意気という理由で3人の先輩からリンチを食らった。

でもこいつらが卒業するまでの我慢と思ってやり過ごすしかなかった。これは田舎の通貨儀礼だから。

大人になった今こそわかる。

彼女らは親がシングルマザー(ファザー)だったり、勉強もスポーツもできないので、唯一の承認欲求の方法が人気者になるでもなく、暴力で支配する事だったのだ。タバコや酒、無免許運転で威嚇することしかなかった。

彼らの現在を見てみなよ。小さな村で平凡以下の生活をしてる。大人になって暴力なんてなんの役にもたたないからね。

簡単に想像できる。

彼ら、彼女らの家には教養を高める本もないし、映画もみないし、旅行をして豊かな経験を育む事もない。習い事に通って感性を磨く事もない。

無知な親から育てられた子の末路。

自己肯定感が高ければ、人を暴力で支配する必要なんかないのよ。

自己肯定感が高いと人を愛せるのよ。友達や周りの人を大事にできるのよ。

大人になった今だからこそわかります。

子供の孤独は見逃しちゃいけない。孤独に支配されると体も簡単に売るし、思考が停止する。クズ男に引っかかる。そいつらは、見抜いて近づいてくるからね。

ネグレクトされた子供はどうしたらいい?

これなんだよなぁ。本の中で、シングルファーザーの環境で父親が出稼ぎに行くと言って飛んじゃって、中学生の少女は食べるために体を売るしかなかった。

学校に行って先生に相談などしていれば行政の力を借りるなどして助けを得られたらかもしれない。でも、父親に連絡が入って、「問題ない、すぐ帰る。親戚の○○に様子見をお願いしてるから」なんて言われた場合はどうするんだろうな。

これも担任が注意深くみるしかないのだけれど。教員も四六時中見張ってるわけにはいかないもんなぁ。

結局、毒親と暮らすより施設で暮らす方が健全

3食食べられて、安全な寝る場所があって、ある程度管理される施設で暮らす方が健全だと思う。

親が夜いなくて育児放棄しているような家だと、夜に繁華街に出たりしてクズ男からの誘惑が発生する。

でもこればっかりは強制的に施設に入れるのも難しいんだよなぁ。

これも運かもしれない

男から鼻が骨折するまでDVを受けた少女は妊娠をした。子供が暴力を受ける前に逃げ出そうとするんだけど、そんな時に支えになってれたのがキャバクラの同僚だった。周りの人との出会いで窮地を脱するのもまた運だと思う。

その頼みの綱を手にする勇気も彼女らにかかっているのだけれど。

最終的に警察に駆け込んで接近禁止令を出してもらって、生活を立て直すのもいい話だった。

普通に生きていたらこんなことある???ってことばかりなんだけど、少女たちには普通の生き方がなかった。

私がたまたま「普通の生活」を手に入れることができただけで

「さっさと逃げ出せばいいのに。悪い男を選ぶ女も悪い!」で切り捨てることは簡単。

これは強者の意見だよね、と思う。

あなたが(私が)普通の生活という椅子から高みの見物をしているだけなんだ。

当事者にはそこから抜け出すことがどんなに難しいか。しかも子供だ。

沖縄の男はよく見極めろ。女は我慢強くて愛情深い

とも思った。障害児を抱えて必死に勉強して看護師になった子の話も胸熱だった。

作者の取材に脱帽

沖縄出身の作者は、少女一人一人に真面目に向き合った。出産にも立ち会ったし、親や男にあったりもした。少女たちと腹を割って話した。

高みの見物でもなく、強者の興味本位の娯楽でもなかった。

読み応え満載のボリュームでしたが、最後まで一気読みしました。泣きました。

私の人を想う心が養われた。同郷として嬉しかった。