1泊2日の地獄の洗脳合宿
私はネットワークビジネスにハマってから3年が経過しようとしていた。売り上げも立てられなくなっていて、自分の下部組織も構築できず、ただただ自分が本業で稼いでいる金だけが溶けていった。上部組織へ金を貢いでいるだけでやるせない気持ちでいた。
そんな気持ちを見透かすように上位リーダーは、組織の合宿に参加するように促してきた。
マルチレベルマーケティング(以下MLM)の組織を盤石にするには、メンバーに逃げられないためにこまめなミーティングが必要だ。また、違う組織メンバーと切磋琢磨させるという目的もある。
参加した。
場所は湯河原のほうだったか、神奈川の外れのどこかだったか……場所が思い出せないんだけれどクネクネ曲がり道で車酔いをしたので、山の方だったということは記憶にある。
ネットワークビジネスといえど、自分の商いをしよう。というのが上位リーダーたちのお言葉。普通の商売という同じように「自分商店」で利益をあげていこうということです。
ネットワークビジネスにハマる人っていうのは、お金を稼ぎたいとは建前ではいうけれど、ビジネスメンバーである限りみんなとワイワイ楽しめる「仲間」という一体感が好きで持続している人もいる。
上位リーダーは、そういう人を感覚でわかってるから厳しい発破もかけないし、むしろ、おだてて褒めてセミナーや合宿に参加させたり、本場アメリカの本社ツアーに参加させたり、ときにはディズニーなんかおごったりして接待のようなこともする。
さて、合宿場所は企業研修で使われるような会議室付き、部屋は大人数で雑魚寝の古い国民宿舎のようなところ。これで2万円近くとられるので、今思えば気が狂っています。これだけ出せばいい温泉旅館泊まれるね。。。( ; ; )
昼間は、がっつり製品のプレゼンの練習をしたり、自分はなぜこのビジネスを始めたのかを話す練習、上位リーダーからのご高説を聞くなど、新卒企業研修のような情熱で、18時頃までがっつりスケジュールが埋まっている。
トップリーダーは言う。「自分はなぜこのビジネスを始めたか? を感動ストーリー仕立てで話せないと人の心は動かない」と。
だから、MLMを始めた理由をきちんと話せるようになりなさい。
100名近くいる人たちの5分間スピーチが始まった。
はっきり言って地獄だ。
ある人は、大勢の前でしゃべることが気持ちよくなって興奮しだすし、ある女性は過去の辛かった気持ちを思い出して号泣。
人間のエゴの博覧館を見ているようだった。感情の波がさーっと沖合に引けていって何もないような感覚。あるいは、大好きだった人に対して、ある日ストンと憑き物がとれたように1ミリの感情もなくなった時のような。。。
とにかく、この場から消え去りたいと思いました。もう疲れた。この合宿が終わったらすべてを終わりにしようと思いました。なんども聞いたセミナーには行かないし、もうこの人らとは付き合わないと決めました。
トップリーダーが体育会系であれば暑苦しい組織になる
夕食前には、女子と男子で大浴場でお風呂に入ります。ここでも全員自社製品を使っているかチェックが入ります。他社製品を持っている人は、笑いながら揶揄されます。ここで気味悪いのは、自社製品の押しがしつこいこと。自分から始まる組織であれば、下位メンバーにセールスすることも大事なことです。
「あの新製品使ってみた? すごくいいよ」とセールスするのは当たり前。
でも、物を売ってやろう! という気持ちよりも純粋な完全洗脳モードで目をキラキラさせてセールスしてくるんですよ。使わない人は頭がおかしい! と言わんばかりに。で、購入するかどうかまできっちり見ている。本当に意地汚いというか、粘着がすごいというか。。。
こういうところにもジクジク違和感をおぼえていた。
夜は、大広間に一同が会して大宴会。お酒が入って、企業のように表彰式なんかもある。100名ほどのメンバーがいるので、ランダムにチーム編成で余興もやった。仕事終わりに交通費をかけて結婚式でもないのに余興の練習をするのだ。
地獄だ。これを嬉々としてやっていた自分を殴りたい。
高みの見物でみているトップリーダーへ捧げるのだ。喜ばせるのだ。MLMは人を喜ばせること。だから、余興のダンスも全力でやるのが当たり前。私たちは「喜び組」だ。ただ性は搾取されない。
深夜まで、下部チームで数名のMTGなんかもやったりする。昼間、日の目をみなかった弱小リーダーがここぞとばかりに張り切る。自分から始まる下位2名ほどのメンバーに偉そうに講釈垂れて自己満足という名のオナニーに付き合わされる。
朝は早く夜も遅くまでミーティングするので、集中力ももたないし、やる気の糸みたいなのが完全に切れた。
翌朝、私は生まれ変わった。いや、完全に洗脳が溶けた。
もうこの人たちとは関わりあるのはやめようと。
皮肉にも私のやる気をアップさせようと参加させたのに、私はきっぱり止めると決断ができた。自腹で参加した合宿やセミナーや製品代など、活動をするのに200万を使う高い勉強代だった。